「無痛」という言葉があります。
人間には痛覚があって、ブレーキの役割を果たしていますね。
しかし、ほとんどの人は痛みがない生活を送りたいと思っています。
痛みの記憶は恐怖となり、痛みを避けるようになる。
「歯医者=痛い=怖い=行きたくない」
という等式は、皆さんの頭のなかにあるかもしれません。
では、矯正治療はどうでしょうか?
矯正治療はじつは、「痛い」治療です。
これは、歯を動かす矯正治療の原理によるものなのです。
どうして歯が動くのか?
自分で指で歯を押しても歯は動きませんよね。
歯が骨の中にガッチリと埋まっているからです。
でも、矯正器具で歯に力を与え続けると
力のストレスを嫌がって歯が埋まっている周囲の骨が吸収するのです。
これは「破骨細胞」という、人間が誰しももっている細胞の作用ですね。
歯が移動したい方向の骨が吸収し、スペースが出来るのでようやく歯は移動できます。
歯が居た場所の骨が無くなってしましますが、
「骨芽細胞」という骨を作る細胞が、骨を作ってくれます。
なので骨の量としては変わらず、骨の中を歯が移動していけるのです。
この骨を壊したり、骨を作ったりするのを骨代謝といいます。
常に人間が全身で行っている生体反応を利用しているのが矯正治療なのです。
虫歯を削ったり、入れ歯を入れたりする一般的な歯科とはかなりメカニズムが異なります。
歯が動いているように見えて、骨が動いていたんですね。
矯正治療が痛い理由、それはこの「破骨細胞」にあります。
破骨細胞が骨を溶かす時に、同時に痛みを感じる物質を出してしまいます。
「プロスタグランジンE2」という物質です。
つまり、歯が動く=(骨を溶かす)=歯が痛いとなるわけです。
言わば、矯正治療における歯の痛みは必要悪なのです。
巷の看板で見かける「痛くない矯正治療」というのは、ウソということになります。
矯正治療の痛みというのは、どのような痛みなのでしょうか。
それは「咬む時だけ歯が少し痛む」という種類の痛みです。
ですから、虫歯のように何もしていない時にズキズキ傷んだりはしません。
お食事の時に硬いものを食べると少しイテッとなる程度なのです。
さらに、矯正治療の期間中ずっと痛いわけではありません。
力を加えてから「3日〜7日くらい」経つと痛みはほとんどなくなります。
月イチペースの通院のうち、残りの3週間ほどは傷まずにお食事が出来るのです。
この痛みの感じ方は、初めて装置を装着した時が一番痛く、
治療が進むにつれ、慣れもありますが「だんだんと痛みは弱くなっていきます」。
最初の違和感と痛みに耐えられれば、以降はそれより小さな痛みしか来ないということですね。
この矯正治療の歯の痛みの原因物質は頭痛などの痛みの原因と同じものなのです。
つまり矯正治療の歯の痛みは、「痛み止めが効きます」。
今は市販薬でもロキソニンなどの鎮痛薬が手に入りますから、飲んでしまって構いません。
飲んで大丈夫ですよ、と言っても飲む人は全体の一割にも満たないほどですが。
矯正治療中は特別、食事制限はありません。何でも好きなものを食べて大丈夫です。
ですが、通院直後の数日は柔らかめのものをお召し上がりになると良いでしょう。
院長も矯正治療経験がありますが、ゆっくり食べれば食べられないものはありませんでしたね。
今回は、矯正治療の痛みについてご説明させて頂きました。
痛みの原因や種類はイメージ出来たでしょうか?
痛みについては、かなり個人差が多いです。
痛がりの人もいれば、痛みに強い人もいます。
今までに数多くの患者さんを治療してきましたが、
痛すぎるから矯正治療をやめたいという方はいらっしゃいませんでした。
それでも、やはり痛くないに越したことはありませんよね?
気持ちに寄り添う歯科医院を目指す当院は
「痛くない治療」は出来ませんが、「痛みの少ない治療」を心がけています。
次回は、「痛みの少ない治療」を実現するための
当院独自の手法やアイテムについてご説明させていただきたいと思います。