前回、矯正治療というものは痛みを伴うものであり、
それをゼロにする事は出来ないとお話させて頂きました。
でも、私達は少しでも痛みを少なくし、
快適に矯正ライフを過ごしてもらえるように考えています。
矯正治療が終わった後に満足してもらえるように努力するのは当た
今回は、
まず、痛みの強弱について説明いたします。
単純に、強い力を歯に与えると痛みが強くなります。
弱い力であれば歯の痛みは弱くなるわけです。
弱い力で歯が動くの?
痛みが少なくても治療が時間かかるのは嫌!
実は、歯は弱い力の方が良く動くのです。
これは歯の周りの骨(歯槽骨)
前回、
弱めの力だと血管が圧迫されて充血し、
強めの力だと貧血を起こして硝子様変性物質というものが作られてしまい、
それを吸収するのに時間がかかってしまうのです。
強めの力だと痛みも強くなり、歯根吸収などのリスクも高まってしまいます。
では、弱い力で矯正治療をするにはどうしたら良いでしょうか。
①なるべく細いワイヤーで治療をスタートする
前回、初めてワイヤーを装着する時が一番痛いと説明致しました。
なので、初めてのワイヤー(イニシャルワイヤー)は一番細いワイヤーを使用すべきなのです。
矯正治療は様々な種類のワイヤーを使用します。
細いワイヤー、太いワイヤー
丸いワイヤー、四角いワイヤー
柔らかいワイヤー、硬いワイヤー
治療の順序や歯の動かし方でワイヤーを組み合わせて治療します。
基本的には、初めは細いワイヤーからだんだんと太いワイヤーにして行きます。
初ワイヤーで弱い力を発揮するためには、「細い・丸い・柔らかい」ワイヤーを選択します。
当院は直径0.012inchのホワイトワイヤーを使用しています。
0.014inchや0.016inchのワイヤーを初ワイヤーに選択する先生が多いでしょうから、
当院の初ワイヤーがどれほどに細いかわかって頂けると思います。
ワイヤーが細いので、ぐにゃぐにゃになっても歯に伝わる力は弱くなります。
ワイヤーの本数を増やすことで矯正力を穏やかに歯に伝えることを意識しています。
②ワイヤーをブラケットに結ぶ力を弱くしています。
ワイヤーの力を歯に伝えるためには、ブラケットに固定する必要があります。
このブラケットに結ぶことを矯正医は結紮すると言い、
古くから細い結紮線というワイヤーで結びつけていました。
しかし、結紮線で結びつける方法は強い力がかかってしまいます。
もちろん治療上、強い力を与える事が必要な場面も出てきますが、
やはり歯の痛みの原因となります。
そこで、当院はワイヤーの力が歯にソフトに伝わるように
「クリスタスナップ」という秘密アイテムを使用しています。
これはブラケットにキャップのようにとりつけることで、
弱い力でワイヤーをブラケットに固定することが出来ます。
東京歯科大学歯科矯正学講座のOBの先生がデンツプライシロナ社と開発したアイテムです。
本来の目的は、「ローフリクション」という摩擦の少ない矯正治療を達成するために
開発されたものですが、弱い力は結果的に痛みも軽減します。
「ローフリクション」についてはまた改めてご説明していきたいと思っています。
やはり、ワイヤーで結紮した時と比較すると患者さんが痛がる様子はありません。
③なるべくワイヤーを曲げないで治す。
矯正治療の歴史は古く、現在行われているエッジワイズ装置という装置で治す方法が
登場してから実に100年もの年月が経っています。
伝統的な方法ではワイヤーを曲げて、ワイヤーの形に歯を動かしていましたが、
現在ではワイヤーを曲げずに治す方法もあります。
ワイヤーを曲げるとどうしても局所的に強い力がかかってしまいます。
強い力がかかる→痛みが出る
ぐにゃぐにゃに曲がったワイヤーは目立ちますし、清掃性も悪くなります。
ですから、当院はワイヤーを曲げずに治す方法を選択しています。
ストレートワイヤー法とスライディングメカニクスと言い、
真っ直ぐなワイヤーの上を、歯を滑らせていくことで動かします。
緩やかな力で治療を行えるので、痛みを少なくすることが出来ます。
以上、3点が当院が痛みの少ない治療を行うための手法です。
現在の矯正治療の数ある方法の中で最も痛みが少ないと考えています。
とことんこだわって、初めて患者さんの痛みを軽減出来るのです。
普通、歯医者に行ったら痛くなくなります。
しかし、矯正歯科は行くと痛くなる場所です。
痛み。時間。費用。煩わしさ。
仕方が無いとはいえ、様々な苦痛を患者さんに強いることになる。
「そういうものだから」と患者さんにガマンをさせていていいものでしょうか。
初めて装置をつけた患者さんが、一ヶ月後に来院した時
必ず痛みについてご質問致します。
「思ってたより痛くなかったよ」
と言って頂けた時が至上の喜びです。
少しでも患者さんが辛くなく矯正治療を出来るように、
当院は追求し続けています。