今回の矯正治療ケースは「非抜歯矯正」です!
トップ画像を矯正歯科医師が見たらきっと抜歯を選択する人が多いでしょう。抜歯=良くない、ではありませんが歯を抜かないでも治療可能なケースもあります。これだけ出っ歯になっていても、適切な処置をすると歯を抜かずに治療ができます。
主訴 | 出っ歯、すきっ歯が気になる |
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診断 | 上顎前突・過蓋咬合 |
年齢 | 16歳(初診時) |
治療装置 | カリエールディスタライザー、リンガルアーチ、マルチブラケット装置 |
使用装置 | クリスタブレース3(.022) |
使用ワイヤー | ナノホワイトワイヤー |
保定装置 | 犬歯間保定装置+ベッグタイプリテーナー(夜間のみ) |
治療期間 | 2年5ヶ月 |
治療費用 | 777,600円(税込) |
治療リスク | 咬合時痛、歯肉退縮、歯根吸収、歯髄壊死、後戻り |
出っ歯が気になるという患者さん。出っ歯は口と閉じにくくなり顔立ちも悪くなってしまいます。見た目だけでなく、前歯が咬みあっておらずほとんど歯として機能しないことが一番問題で、咬み合わせが悪くなっています。歯は咬むためにあるので、歯を大事に残していくため、咬み合わせを良くするのが矯正治療の目的です。
前歯が出っ歯になっている理由は、奥歯がずれているのが原因です。このケースでは正常な咬み合わせよりも上の奥歯が前方位にあり、結果として前歯が咬み合わなくなっているのです。この奥歯のずれを治す方法として、歯を何本か抜歯して奥歯を前後に動かしたり歯の本数を減らしてバランスを取ることが一般的です。ただ、上の歯を後方移動すれば奥歯のずれを正し、出っ歯を治す事が可能になります。
歯の後方移動を「遠心移動」と言いますが、この遠心移動は矯正治療の中でも難易度が高く、先人たちは色んな方法で実現してきました。難しいので好まない先生も多いでしょう。当院ではカリエールディスタライザーという装置を使用して遠心移動を行うようにしています。
上顎の横の歯に取り付けたカリエールディスタライザーと、下顎の内側に装着したリンガルアーチとの間で、顎間ゴムを使用します。下の一番奥と上の犬歯でゴムを引っかけるのは、患者さん自身にやっていただく必要があり、使用時間はなんと1日20時間以上!食事歯磨き以外の間は常にゴムかけをし続ける必要があります。
また、上の親知らずがある場合は後方に移動してくれないので、親知らずは抜歯します。(非抜歯と言いつつ親知らずは抜きますごめんなさい)
ひたすらゴムかけを一年以上やり続けてもらい、奥歯が正常な位置まで後退したら、あとは歯を並べていくだけで最終的に咬み合います。奥歯の位置を整えると人間の歯並びはうまく咬みあうように出来ています。反対に、奥歯の位置がずれていたら良い咬み合わせにはなりません。上の歯が後方移動したために生じたスペースを閉じ切り、垂直的にも前後的にも前歯がちゃんと咬み合ったら治療完了です。
やや正中のずれが残りましたが、患者さん的に問題ないとのことで治療を終了し、以降はリテーナーに切り替わりました。歯の裏につける固定式のワイヤーと取り外し式のリテーナーを夜間使用してもらいます。前歯も引っ込んで口も閉じやすくなり、横顔のバランスも理想的になりました。実は、双子のご兄弟も全く同じ治療法で治療しましたが、同様に良く治ってくれました。
これだけ奥歯がずれていましたが、最終的に後方移動がうまく達成できました。かなり無謀なプランニングでしたが、ご本人がとてもストイックな方でしたので助かりました。ゴムは自分でかけるものなので、患者さんの頑張り依存になるのも難易度が高いポイントです。通常、遠心移動は一本ずつ歯を後ろに移動させていくものですが、カリエールディスタライザーは数本同時に移動させてくれるます。効率的でとても気に入っています。
いかがだったでしょうか?かなり出っ歯なケースをあえて非抜歯で治療したレアなパターンだったのでクイズ形式にしてみました。抜歯しないで治す方法は色々あるのです。治療プランは矯正歯科医師としっかりと話し合いましょう。
マロニエ矯正歯科クリニックでは、治療症例についても発信していきます。(掲載については同意を得ております。)